
熱可塑性樹脂の種類
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ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレン(PP)は、使用範囲が非常に幅広く最も多く使用されているプラスチック素材の一つです。樹脂の中で最も比重が軽く(0.9程度)、加工性が高い上に、優れた強度を持っており、透明性・発色性も高い特徴があります。
一般家庭で使用されるものとしては例えば、家電製品や文房具、おもちゃやスポーツ用品、オムツ、カーペットや下着などがあります。また工業用としては自動車用のパーツ、医療用注射器の材料や包装フィルム、建設資材では電線ケーブルの被覆にも使用されます。使用形態もさまざまで、単純成形だけでなく速乾性があることから、繊維素材としても使用されています。加工が容易で薄くできるということからフィルムやシートとしても使用されます。
■メリット
・軽量性がある
比重が0.9と軽量です。
・耐熱性がある
熱可塑性樹脂のなかでも耐熱温度が高い傾向にあります。
・耐薬品性が高い
薬品による影響を受けにくいため、科学機器や医薬機器などにも多く採用されています。
・機械的強度に優れる
機械的強度に優れており、表面が硬くて耐摩耗性も良好です。
・加工性が良い
切削加工や曲げ加工などの加工がしやすく、射出成形や押出成形などさまざまな製法に対応できます。
■デメリット
・耐候性が悪い
紫外線に弱くいため、屋外での使用には適していません。
・接着性が悪い
接着性に乏しい特徴があります。
・印刷性が悪い
そのままだと印刷が難しい材料のため、印刷時には下地処理を施す必要があります。
ポリアミド(ナイロン・アラミド)
ポリアミド(ナイロン・アラミド)は、最も身近なプラスチック素材の一つで衣類の材料として使用されることが多いです。自動車製造に多数使用されており、エンジンカバー、アクセルペダルやドアハンドル、シートベルトなどあらゆる部分に使われています。
ナイロンの使用用途の35%は自動車用といわれています。またその他にもおもちゃ、食品用フィルム、釣り糸や歯ブラシ、衣類やカーペット、ロープなどに使用され、電子機器の基板やコネクタ、ケーブル類、工業用では断熱材や防水シート、配管など、医療用としては手術器具、カテーテルにも使用されています。
*ポリアミドはプラスチックの種類を示すもので、ナイロンはデュポン社が開発したポリアミドの製品名。脂肪族骨格や半芳香族骨格を含むポリアミド。
*アラミドはナイロンの機械的特性をより高めたもので、鋼鉄を超える引っ張り強度や耐熱耐摩耗性を持つものや、高温・耐薬品性がより強化されているものがある。芳香族骨格だけで構成されるポリアミド樹脂。
■メリット
・耐熱性が高い
ナイロン6.6の融点は265℃、アラミドの融点は320℃と非常に耐熱性に優れているのが特徴です。
・機械的強度がある
特にアラミドは金属の代替品にも用いられるほどの強度があり、他の樹脂やプラスチックよりも強度に優れています。
・耐摩耗性に優れる
表面が硬いため、耐摩耗性に優れています。ナイロンの耐性は、綿の10倍とも言われており、衣料用繊維として代表的な素材となった要因でもあります。
・引張強度に優れる
引っ張り強度や靱性に優れており、特にアラミドは鋼鉄の5倍とも言われております。
■デメリット
・吸水性がある
吸水性が高く湿度による性質の変化や寸法安定性の低下が起きるおそれがあります。
・耐候性が低い
紫外線に弱く、屋外での長期間の利用で色落ちや強度の低下などの劣化がおきる恐れがあります。
・帯電しやすい
静電気を発生しやすく帯電が起きます。
PC(ポリカーボネート)
ポリカーボネート(polycarbonate)は、熱可塑性樹脂の一種で、高い透明性や耐衝撃性が特徴のエンジニアリングプラスチックです。
一般用途や工業用途を含め非常に多くの場所で使われている身近な材料で、有機ガラスとも呼ばれます。カメラレンズ、DVD基盤、車のヘッドランプ、スマートフォンのケースとボディ、ヘルメット、看板や高速道路の遮光板、防弾素材など幅広く使われています。
よく似た素材としてアクリルがありますが、ポリカーボネートの方が耐衝撃性や難燃性に勝る一方、加工性やコストにおいてはアクリルの方が優れています。連続耐熱温度は約120℃で、熱変形温度は、130~140℃程度です。
■メリット
・透明性が高い
樹脂の中ではトップクラスといわれ、光線透過率がガラス板は92%に対してポリカーボネートは約86%程度あります。携帯電話の前面板等にも使用される程透過率が高いです。
・耐衝撃性が高い
ABSの5倍、塩ビの10倍、アクリルの50倍、ガラスの200倍の耐衝撃性を持っています。
・耐候性が高い
紫外線に強いため、屋外での使用でも劣化しにくいです。また高温・低温に強く(-100℃~140℃と広範囲)、電子レンジや冷凍庫、炎天下でも使用が可能で、他の樹脂よりも劣化しづらいです。
・吸水性が低い
成形収縮率が低いため、寸法精度に優れます。吸水率も低く、寸法安定性も高い素材です。
・加工性が高い
同じ透明樹脂のポリエチレン(PE)やアクリルと比較すると衝撃への強さは約50倍です。また強度がありながらも非常に柔軟な素材で、アルミニウム金属シートと同様に、亀裂や破損をせずに形成することができます。電気絶縁特性が必要な際は、ポリカーボネートが金属の代替材として有効な素材となります。
・自己消火性が高い
難燃剤を添加することでV0グレードにすることが出来ます。
■デメリット
・有機溶剤や界面活性剤に弱い
強アルカリ性や有機溶媒に弱く、有機塗料、接着剤等に接触すると劣化・白濁してしまいます。高温高湿度環境下で加水分解が起こりやすくなります。
・傷が付きやすい
応力亀裂を起こしやすく、表面硬度が高くないので、アクリルと比べると傷つきやすいです。
・価格が高め
PET(ポリエチレンテレフタレート)
PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂は熱可塑性樹脂の一種で、高い汎用性を持つ素材のひとつです。構造の似ているPBTとひとくくりでエンジニアリングプラスチックに分類されます。
磁気テープなどにも使われるほか、電子機器部品ハウジング、ディスプレイなどにも使用されます。また、ガラス繊維を混ぜてFRPといわれる繊維強化プラスチックとしても使われるケースも多く、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)は軽くて丈夫な素材として自動車部品などに利用されています。軽量で透明性を持つ素材でありながら、-60℃程度の耐寒性を持つため、食品の包装に適しています。ペットボトルに限らず、卵のパック、フィルムなどさまざまな用途に使用されています。
■メリット
・耐熱・耐寒性がある
加工方法に左右されますが、耐熱温度200℃、耐寒温度-60℃程度です。
・加工しやすい
薄いフィルムから厚みのある板状、ペットボトルのような曲線を持つ円柱形と、柔軟に加工できます。
・耐水性がある
PET樹脂は水を通しません。水分による変形などがないことも、液体の容器に使用される理由のひとつです。
・薬品に強い
一部を除き耐薬性があるため、薬品類の包装や医療機器にも使用可能です。
・透明性がある
飲料容器に用いても、飲料の色味を損ないません。
・絶縁性がある
汎用プラスチックに比べて高い電気絶縁性をもちます。
・焼却できる
PET樹脂は塩素を含まないプラスチックであるため焼却してもダイオキシンの発生原因になりません。
・リサイクルできる
PET樹脂から生成された繊維を使用するアパレルブランドも少なくありません。繊維としてはポリエステルとよばれ、合成繊維のうちおよそ30%を占めています。
■デメリット
・強度が弱い
エンジニアリングプラスチックとしては強度が弱く、工業用途ではガラス繊維での補強が必要です。
・高温下で加水分解を起こす
高温の水中下のような状況で用いるには困難な素材です。
・耐熱性が低い
PETボトルの耐熱性は50℃程度、耐熱ボトルでも80℃程度です。
・有機溶剤や無機酸に弱い
無機酸に弱く、有機溶剤耐性はアルコール度数20度が目安です。
・耐候性が低い
屋外で使用した場合、劣化する可能性があります。
ABS
ABS樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂ともよばれます。アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンという3種類のモノマーで製造されます。
アクリロニトリル:耐熱性、機械的強度(剛性)、耐油性
ブタジエン:耐衝撃性(ゴムの特性)
スチレン:光沢性、成形性(加工性)、寸法安定性
ABS樹脂はさまざまな機械的特徴をバランスよく有しており、見た目も美しいため、汎用的なプラスチック素材として様々な場面で活用されています。自動車用途ではフロントやラジエーターグリル、インストルメントパネル、ドアパネル、フロントカバー、ランプカバー。一般機器や家電としてはテレビ、冷蔵庫、洗濯機、プリンター、複写機、パソコン、電話機、ファックスなどの部品。その他としては玩具・化粧品容器・トイレ・キャリーバック・時計・スポーツ用品・楽器などに使われています。
■メリット
・耐熱温度が高く熱に強い
耐熱温度は70~100℃程で、一般的な用途で使用する分には十分だといえます。
・外部からの衝撃に強い
ブタジエンを含むため、ゴムのような耐衝撃性があります。
・用途に合わせて柔軟に加工できる
加工性がよく、射出成形や押出成形、真空成形、3Dプリンターなど様々な方法で成形が可能です。また切削や接着、溶着、めっきや塗装などの表面処理も可能です。
・デザイン性が高い
表面の光沢性や着色性にすぐれているため、製品のデザイン性を高めることが可能です。
・成分を追加または変更して、様々な特性を付与できる
成分を加えたり、既存成分の一部を別の成分と入れ替えたりすることで、様々なABS樹脂をつくり出せます。ガラス繊維を加えて剛性を強化した「強化ABS樹脂」や、ブタジエンのかわりに塩素化ポリエチレンを使用した「ACS樹脂」などがあります。
■デメリット
・耐候性が低く劣化しやすい
耐候性が低く、太陽光での紫外線で変色や光沢劣化が起こります。表面加工や紫外線吸収剤の添加などによって耐候性を向上させたABS樹脂もあります。
・有機溶剤に弱い
耐薬品性がそれほど高くないため、有機溶剤によって劣化する場合があります。
・燃えやすい
可燃性の樹脂ですが、難燃剤を加えて燃えにくくしたABS樹脂も存在します。
PEEK
PEEK(ピーク)は熱可塑性樹脂の一種で、プラスチックのなかでも特に高い性能を持った「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」に分類される材料です。Poly Ether Ether Ketone(ポリエーテルエーテルケトン)の略称です。
耐熱性、耐薬品性、耐熱水性、難燃性、力学的特性、電気的特性に優れており、医療機器、航空宇宙産業、自動車産業、化学産業、半導体産業など様々な産業分野で使われています。自動車産業ではギア・ベアリングなどの各部品が金属部品の代わりとして軽量化、絶縁性を目的として代替部品として使用されることもあります。
PEEK材は基本グレードの他に、用途に応じて様々なグレードが存在します。
・PEEK強化グレード
カーボン繊維やガラス繊維との複合材料にすることで、通常のPEEKではカバーできない環境下で使われます。繊維材の影響で「ソリ」が発生しやすくなるため、切削加工は難しくなります。
・PEEK導電グレード
一般的にプラスチックには絶縁性能がありますが、PEEKにカーボン繊維を混ぜ込むことで「導電性」を持たせたグレードです。繊維材の影響で切削加工は難しくなります。
・PEEK医療グレード
医療機器の軽量化のために金属代替として使われたり、体内で無毒かつ不活性のため生体適合性を考慮したグレードです。注射針やインプラント、義歯などに活用されています。
・PEEK摺動グレード
部品交換がむずかしい箇所での使用されることが多く、潤滑性・耐摩耗性を向上させたグレードです。炭素繊維やPTFE(四フッ化エチレン)を充填することで耐久性が上がり、機械部品の寿命が向上します。
■メリット
・耐熱性に優れる
耐熱性はスーパーエンジニアリングプラスチックの中でも特に優れており、高温環境下で安定した物性を維持できる材料です。連続使用温度は260℃程度、融点は340℃程度です。熱水やスチームに対しても耐性があり、オートクレーブによる高圧蒸気滅菌も可能です。
・機械的特性に優れる
高温環境下でも引張強度や耐衝撃性に優れており、CFやGFを添加することで強度のグレードを上げることもできます。
・耐薬品性に優れる
耐薬品性に非常に優れており、濃硫酸以外の酸やアルカリ性に耐性を持っています。高温環境下でも耐薬品性を有します。
・食品安全性がある
日本の食品衛生法や米国FDAの規格を満たしており、食品接触用途として食品や飲料の加工装置にPEEK製の部品を用いることも可能です。
・難燃性である
燃焼時の発煙や有毒ガスの発生が非常に少ない難燃性の素材です。
■デメリット
・切削加工や切断加工が難しい
機械的強度の高い特長を持つことが特徴ですが、それゆえに切削加工や切断加工が難しい材料です。
・コストが高い
1kg当たり約1万円と他の樹脂材料と比べて比較的高価な材料です。この価格は汎用樹脂の約50倍、一般的なエンジニアリング・プラスチックの約30倍程度です。